「崖と空」



切り立った崖の上に
僕はひとり立っている

谷底は遥か闇の中に消え
落ちれば一巻の終わり

目もくらむ程のその高さに
僕は堪らず背を向ける

だが振り向いたその先も同じ
切り立った崖の上

右を向いても
左を向いても
そこは切り立った崖の上
僕は一歩も動けない

途方に暮れて立ち尽くすうち
僕の目は救いを求めて
空へと向かう

その時 僕は初めて気づく
空の青さに
空の広さに
深さに
圧倒的なその存在に

僕はいつまでも飽きる事無く
空を見上げる

崖の上に立っているのも忘れて
力尽きて谷底へ落ちるまで
命がけで空を見上げる

僕は幸福だろうか?
不幸だろうか?

確かな事はただひとつ
僕の上には いつでも空がある






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