「いつか」



朝、駅のホームのいつもの場所に立つと、線路のすぐ向こう側に、
一棟の背の高いマンションが見える。
その屋上には、金網のフェンスが張り巡らされていて、その一角の
フェンスの外側に、人ひとりがようやく立てるか立てないかという
程の、ほんの狭いスペースがある。
そこから一歩先はもう何もなく、遥か下のアスファルトの地面まで
真っ逆さまに落ちるだけだ。

毎朝この光景を見ると、僕の中に、あの屋上の角に立ってみたいと
いう衝動が生まれる。
飛び降りたい、とまでは思わない。でも‥‥

でもいつか‥‥

いつかあの場所に立ちたいとは、何故か必ず思うのだ。






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