双子のドアノブ


(1)


双子のドアノブがおりました。

あらかじめお断りしておきますが、ネコオルランドのお話
にしては珍しく、今回の主人公は猫ではありません。ある
ひとり暮らしのオス猫の家の、玄関の扉のドアノブが主人
公です。

双子のドアノブは、扉の挟んで内側と外側に、背中合わせ
に繋がっていました。外側のドアノブ・外ノブがお兄さん
で、内側のドアノブ・内ノブが弟です。
外ノブには不満がありました。扉の外側に付いているので、
真夏の暑い日にはじりじりと火傷をしそうなくらいに熱く
なりますし、寒い冬の日は木枯らしにさらされて凍えそう
になります。雨風の強い日にはびしょ濡れになったりもし
ます。
それにひきかえ弟の内ノブは、扉の内側に付いているので、
夏に暑いことも冬に寒いこともないですし、雨に濡れるこ
ともありません。だから外ノブは、内ノブのことを大変う
らやんでいました。

「おい、内ノブ。」
「なんだい、兄さん。」
「お前はいつも家の中にいるから、夏は涼しいし冬は暖か
いのだろう?僕は表にいるから、夏はじりじりと火傷をす
るぐらい暑いし、冬は凍えそうに寒いんだ。雨も降れば雪
も降る。強い風だって吹く。僕がどんなに辛いか、お前に
は分からないだろうな。」

外ノブは時々、扉の向こうの内ノブにそう言って愚痴をこ
ぼしました。

「ああ、どうして僕は扉の外側に付けられてしまったんだ
ろう?僕も内側に付けられたかったなあ‥‥」

そう言われると内ノブは、なんだか申し訳ない気持ちにな
って、しゅんとするのでした。

「ごめんよ兄さん、僕ばかりいい思いをして‥‥」
「ちぇっ、謝られたって仕方がないよ。」

内ノブに謝られると、外ノブは余計に悔しくなって、腹が
立つのでした。






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