(2)


ある日、どこからか一羽のカラスが飛んできて、外ノブの
目の前の地面にぺたんと降り立ちました。

「やあ、カラスくん。こんにちは。」
「こんにちは、ドアノブくん。」

これはちょうどいいところに来てくれたと思って、外ノブ
はたまりにたまった不満を、カラスに聞いてもらうことに
しました。

「聞いてくれよ。僕は腹が立って仕方がないんだ。いや何
って、弟の内ノブのことさ。僕たちは双子だから姿かたち
はそっくりだけど、間に扉一枚はさんだだけで、暮らしぶ
りは大違いさ。僕は年中表にいるから、夏はじりじりと火
傷をするぐらい暑いし、冬は凍えそうに寒いんだ。それに
比べて弟のやつは家の中にいるから、夏は涼しくて冬は暖
かい思いをしている。雨に打たれることもないし、風に吹
かれることもない。僕が毎日どれだけ辛い思いをしてるか
なんて、あいつにはちっとも分からないのさ。あーあ、僕
も内ノブに生まれたかったよ。同じドアノブなのに、どう
してこんなに不公平なんだろう? 僕は不幸せなドアノブ
だ。」

外ノブは、言いたいことを一気にまくし立てましたが、カ
ラスは聞いているのかいないのか、えさを探してあっちへ
ちょこちょこ、こっちへちょこちょこ、時々思い出したよ
うに、かあかあと大きな声で鳴いたりしていました。

「おい、ちょっとカラスくん。聞いてるのかい?」
外ノブはいらいらして訊ねました。

「聞いてるよ。いやなに、ずいぶんと勝手なことを言って
るなあと思ってさ。」
カラスは、相変わらずちょこちょこ動き回りながら言いま
した。

「勝手なことだって?どうしてだい?何が勝手なことなん
だい?」
外ノブは少しむっとして、声を荒げて言い返しました。

「確かに君の気持ちも分かるよ。腹が立つこともあるだろ
うね。でも、君は本当に弟より不幸せなのかい?君に辛い
ことがあるように、君の弟にだって辛いことがあるんじゃ
ないかい?」
「弟に辛いことが?いったい何のことだい?」
「それは僕の口からは言えないな。自分でよく考えてごら
んよ。」
そう言い残して、カラスはどこかに飛び立って行きました。






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