(3)
「ちぇっ、何だよカラスのやつ。偉そうなことを言って。
なんだってあんなに弟の肩を持つんだ?ふん、どうせこっ
そりふたりで僕の悪口でも言っていたんだろうさ。」
カラスがいなくなった後も、外ノブはひとりでぶつぶつと
愚痴をこぼしていましたが、ふとあることに気づきました。
「待てよ‥‥弟はずっと家の中にいるから、カラスくんと
会って話をすることはできないんだっけ。‥‥カラスくん
だけじゃない。スズメくんもツバメくんも、おそらく弟は
この家のご主人以外、ほとんど誰とも会ったことがないん
だな‥‥」
そんなことを考えていると、いつの間にか日が暮れてきて、
外ノブの目の前の空が夕焼けで真っ赤に染まりました。
「こんなにきれいな夕焼け空も、あいつは見ることができ
ないんだ。雨上がりの虹も、夜の星空も、春の桜も秋の紅
葉も、あいつは知らないんだ。」
外ノブはだんだん、弟の内ノブが気の毒になってきました。
そして今までいろいろと文句ばかり言って申し訳なかった
という気持ちになりました。
その日の夜、あたりがしんと静まり返った頃、外ノブはそ
っと内ノブに話しかけました。
「おい内ノブ、まだ起きているかい?」
「起きてるよ。なんだい兄さん?」
「その‥‥お前に謝ろうと思って。今までお前にいっぱい
文句を言って悪かったね。ごめんよ。」
あらたまって話す兄の声を聞いて、内ノブはおかしくなっ
てくすりと笑いました。
「いいんだよ、そんなこと。どうしたんだい急に?」
「いや、よく考えてみたら、お前にだって文句を言いたく
なるような辛いことがあるんだろうなと思ってね。」
「そういえば昼間、誰かと話してたみたいだね?」
「ああ、カラスくんと話してたんだ。」
「カラスくん?誰だいそれ?」
「そうか、お前はカラスを見たことがなかったんだね。カ
ラスというのはね、全身が真っ黒でかあかあと大きな声で
鳴く鳥だよ。」
「鳥ってなんだい?」
「鳥っていうのは、体が羽毛で覆われていて、くちばしが
あって翼があって、それをばたばたと羽ばたかせて空を飛
ぶ生き物だよ。」
「へえ!面白いね。」
内ノブが楽しそうに声を弾ませてそう言ったので、外ノブ
はなんだか嬉しくなりました。
「そうだ、これからはお前にいろんな話を聞かせてあげるよ。
お前が知らない生き物や、見たことのないきれいな景色の話
なんかを。」
「ほんと?わあ、楽しみだなあ!」
それから外ノブは、毎日夜になると内ノブにいろいろな話
をして聞かせてあげるようになって、ふたりはとても仲良
しの双子になりました。
(おわり)
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