(2)


ある夜、フィンゴは夢を見ました。
夢の中の町は、ゴミがひとつも落ちていない、とてもきれ
いな町でした。その町の猫たちはみんな、道にゴミを捨て
たりしないのです。誰もが人の嫌がることをせず、誰もが
人を思いやる心を持っていました。(人じゃなくて猫です
が。)まさしくそこは、フィンゴが夢見る理想の町でした。
「ああ、なんて素敵なんだろう。」
フィンゴはうれしくなってそう言いました。

そしてその時、ふと気づいたのです。その町にはフィンゴ
がいないことに。

フィンゴは掃除夫。掃除をするしか能がない男。だから掃
除夫がいらない町には、フィンゴは存在しないのです。
夢はそこで終わって、フィンゴは目を覚ましました。まだ
夜明け前の暗い部屋は、しーんと静まり返っていました。
ベッドの上に座ったまま、しばらくの間フィンゴは呆然と
して、今見た夢のことを考えていました。

夜が明けて、太陽が昇り朝がやって来ました。今日もいい
天気です。まだ誰も歩いていない町の中に、今日も変わら
ず掃除をするフィンゴの姿があります。
あちこちにゴミが落ちている通りを見渡しながら、彼は昨
夜の夢のことを考えていました。
フィンゴが夢見る世界。ゴミのない世界。それはフィンゴ
のいない世界。フィンゴが生きていけない世界。

彼は思いました。それでもかまわないと。

たとえ自分がいなくても、誰ひとりゴミを落とさない世界、
ひとつもゴミが落ちていない世界は、どんなに素敵な世界
だろうと。

「いつかきっと、そんな世界がやって来る。いつかきっと。」

毎日町の掃除をしながら、フィンゴはそんな気がするので
した。
                      (おわり)






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