(10)
ここは、ネコオルランドのとある小さな町の小さなバーで
す。
天文学者のルアーノ、海洋学者のロポック、それに自由猫
(自由人)のサーストンはその夜、旅から戻ったギャンゴ
ーと久しぶりに再会していました。
ギャンゴーは、ゴーフとの戦いの一部始終と、港に帰って
見た不思議な夢のことを、三人とバーのマスターにこと細
かく話して聞かせました。
「それはやっぱりゴーフの声だろうな。自分たちの領分を
わきまえず、他の生き物の生活を脅かしている僕たちのこ
とが、ゴーフは許せなかったんだろうな。」
いつものようにモヒートを飲んでいる、白猫のサーストン
が思慮深そうな顔をして言いました。
「そう言えば、ゴーフに襲われた船はたくさんあるけど、
犠牲者はひとりも出ていないんだ。おそらくゴーフは、乗
員がみんな退避したのを見計らって、船を沈めていたんだ
ろうね。元々、僕らに危害を加える気はなかったんだよ。」
こちらもいつものカルーア・ミルクのグラスをテーブルに
置いて、灰色猫のロポックが言いました。
久しぶりに大好きなウイスキーを口にしたギャンゴーは、
「僕らはゴーフの警告を肝に銘じなければならない。世の
中はどんどん便利になるけど、果たしてそれが本当にいい
ことなのか?その陰で何か大事なものを見過ごしていない
か?自分でも気づかないうちに、何かを犠牲にしていない
か?僕らはもっとそういうことに、注意深くならなければ
いけないんだ。」
と言って、神妙な面持ちになりました。
「でも、みんな無事に戻ってきて、本当によかったです。」
カウンターの向こう側から、三毛猫のマスターがそう言っ
て笑いました。
するとギャンゴーも、ようやく表情をゆるめました。
「ありがとう。今回の旅の最大の収穫は、新しい仲間が出
来たことだよ。最高の仲間がね。これも君たちのおかげだ。」
それを聞いて、ロポックとサーストンは嬉しそうに顔を見
合せました。
「今度はリアーニとレクーとロミも呼んで、みんなで飲も
うよ。」
「そうだ、それがいい。」
「今夜は店のおごりです。皆さんご存分に召し上がって下
さい。」
マスターがそう言ったので、みんな大喜びです。
ここで、今まで黙って聞いていた虎猫のルアーノが、ここ
ぞとばかりにドライ・マティーニのグラスを片手に立ち上
がりました。
「おっほん、えーそれでは誠にせんえつながら、私が乾杯
の音頭をとらせて頂きます。我らがギャンゴー探険隊の無
事の帰還を祝しまして‥‥」
「それと、僕らに警告を与えてくれたゴーフに。」
ギャンゴーがそう付け加えると、ルアーノは慌てて言い直
しました。
「おっと、そうだった。それと海の守り神、いやこの星の
守り神、ゴーフに。乾杯!」
「乾杯!」
(おわり)
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