神さまのごはん


(1)


ネコオルランドの首都・ツォルカーナからだいぶ離れた所
に、ターヌアーという小さな村があります。その日、ター
ヌアー村の集会所では、お葬式がとり行われていました。

亡くなったのは、この村に住んでいたおばあさんの黒猫で
す。集会所には、おばあさんの家族のおじいさん、息子夫
婦に娘夫婦、孫たち、それにおばあさんと親しかった猫た
ちが大勢参列していました。

お葬式はお昼過ぎに終わって、その後、みんなおばあさん
の柩(ひつぎ)と一緒に、少し離れた所にある火葬場へと
移動して行きました。

火葬が終わるまでの間、みんなが待っている控え室の中で、
おじいさんは孫の中のひとりが見当たらないのに気づきま
した。それはクシーという名の男の子の黒猫でした。クシ
ーは、おじいさんの孫の中でも一番小さくて、死んだおば
あさんにとても可愛がられていた子です。

「おい、クシーはどうした?」
おじいさんは、クシーのお母さんをつかまえて訊ねました。

「ああ、あの子は先に家に帰しましたよ。葬式の間ずっと
泣きっぱなしで、どうなだめても泣き止まないので、ここ
へは連れて来なかったんです。」
「そうか‥‥」

おじいさんは、クシーのことが気がかりだったので、家ま
で様子を見に行きました。
するとクシーは、家の前の石の上に座って、両手で目を覆
って、体を縦にひくひくと揺らしながら、声を上げて泣い
ていました。
おじいさんはゆっくりと近づいて行って、クシーの横に座
りました。

「クシー、ばあさんが死んで悲しいのはわかるが、いつま
でも泣いていてはいけないぞ。もう泣くのはやめて、みん
なの所へ行こう。」
おじいさんが優しい声でそう言いましたが、クシーは相変
わらず泣き続けていました。

(さて、どうしたものかな‥‥)
おじいさんは、すっかり困って考え込んでしまいました。






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