(2)
「クシー、死んだばあさんがこの後どうなるか知っている
か?」
不意におじいさんは、クシーにそう訊ねました。
クシーは泣きながら首を横に振りました。
「うむ、ばあさんは骨だけになって墓の下に入るんだ。で
は、骨以外のところはどうなると思う?」
クシーはまた首を横に振りました。
「骨以外のところは煙になって、あの煙突から空に昇って
行くんだ。」
おじいさんはそう言って、遠くに見える火葬場の煙突を指
差しました。クシーは手のすき間から、そちらの方をちら
っと見ました。
「では、空に昇った煙がその後どうなると思う?」
クシーは両手を目の上から離して、おじいさんをじっと見
ながら首を横に振りました。
「神さまのごはんになるんだ。」
「神さまのごはんに?」
クシーはびっくりして、思わず聞き返しました。
「そうだ。ほら、仙人さまが霞(かすみ)を食べて生きて
いるって聞いたことがあるだろう?それと一緒で、神さま
はわしら猫が死んだ後の煙を食べるんだ。」
クシーはもう泣くのをやめて、目をくりくりさせておじい
さんの話に聞き入りました。
「わしらが、魚や肉や野菜を食べるのと同じで、神さまは
その煙から栄養を取っているんだ。神さまの栄養になるに
は、猫は長生きしなければいけない。ほら、わしらだって
まだ小さい魚や、まだあまり育っていない野菜を食べても、
それほど栄養にならないだろう?それと一緒だ。」
「それで、神さまのごはんになったおばあちゃんは、その
後どうなるの?」
クシーはもう、おじいさんの話に夢中になって訊ねました。
「ばあさんはな、神さまの一部になって、神さまと一緒に
いつまでも生き続けるんだ。だからもう悲しむのはおやめ。
お前がいつまでも泣いてばかりいると、神さまになったば
あさんが心配するぞ。」
クシーは、両手で目のまわりについた涙をごしごしと拭い
て、真っ直ぐにおじいさんを見上げながら、こっくりと首
を大きく縦に振りました。
「うん、わかった。僕もう泣かないよ。おばあちゃんが心
配しないようにする。」
「よしよし、お前も将来神さまの一部になれるように、ち
ゃんといい子で強い子になって、うんと長生きするんだよ。
そうしたらいつかまた、空の上でばあさんに会えるぞ。」
「うん、わかった。僕いい子で強い子になって、いっぱい
長生きするよ。」
ようやく笑顔になったクシーを見て、おじいさんは安心し
て頭を軽くなでました。
「では、ばあさんと最後のお別れをしに行こう。みんなが
待ってるぞ。」
おじいさんとクシーは、手をつないで火葬場の方へ歩いて
行きました。その途中、火葬場の煙突から、もくもくと煙
が上がり始めました。
「おばあちゃん!」
クシーは思わず声に出しました。それから心の中で、おば
あさんにこう話しかけました。
(空の上からずっと見ててね。僕いい子になるからね。)
その時、まるでクシーの心の言葉に返事をするように、煙
が風に吹かれてゆらゆらと優しく揺れました。
(おわり)
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