(3)


ある日、誰かがロポックの家の扉をノックしました。ロポ
ックはいつものように放っておいたのですが、ノックの音
はいつまでも鳴りやまず、しまいにはどんどんと乱暴に扉
をたたき始めたので、仕方なく扉を開けると、そこには知
らない猫が立っていました。
「僕のことを覚えているかい?」
知らない猫はそう言いました。ロポックが首をかしげてい
ると、その猫はちょっと不満そうな顔になりなした。
「ゴーストロモ号から君を助けた気球に乗ってたのが僕だ
よ。」
「ああ、あの時の。」
それは気球でロポックを救助した猫でしたが、ロポックは
彼の顔をよく覚えていませんでした。目の前で友だちが海
に落ちたのですから、覚えていなくても無理もありません。
「一言文句が言いたくて来たんだ。君はせっかく助かった
のに、全然喜んでいないそうだね?」
その猫は不機嫌そうに言いました。
「え?」
「知っているよ。いろいろと噂が耳に入ってくるんでね。
友だちが死んで悲しいのはわかるけど、それじゃあまるで
僕がしたことが無駄だったみたいじゃないか?」
「いや、そんなつもりじゃ‥‥」
「僕だってあの時は大変な思いをして、君を助け上げたん
だぜ。せっかく命を救ったのに、少しも喜ばないなんて失
礼じゃないか!」
救助猫は、耳とひげをぴんと逆立てて怒っています。ロポ
ックはなんて答えていいか分からなくて、ただ黙ったまま
立っていました。
「あーあ、こんなことなら君を助けるんじゃなかったよ。
君の友だちを助ければよかった。他にも助けてほしかった
猫はいっぱいいたんだ。そんなに生きているのが不満なら、
君も‥‥」
そこまで言って救助猫は、あとの言葉をぐっとこらえて呑
み込みました。
「僕が言いたいのはそれだけさ。あとは勝手にするがいい
よ。邪魔して悪かったね。」
言うだけのことを言ってしまうと、少し気が済んだ様子で、
救助猫はさっさと帰っていきました。そのあともロポック
はしばらくの間、ショックを受けたように戸口に呆然とた
たずんでいましたが、家には入らず、そのままふらりと表
へ出ていきました。






前へ          戻る          次へ