(6)


「これからどうするんです、ギャンゴーさん?」
ロミが不安げにそう言うと、ギャンゴーはしばらく考え込
んで、ようやく言葉を絞り出しました。
「うん‥‥あれだけの量の麻酔が効かないのは計算外だっ
たな。作戦を練り直さなければ。」

その時、突然船が横に大きく揺れて、操舵室の三人はよろ
けて転びそうになり、舳先のリアーニは危うく海へ投げ出
されそうになりました。

「どうしたんだ、船長?」
ギャンゴーがレクーに訊ねました。

「ゴーフの仕業ですよ。」
レクーはそう答えて、窓の外を指差しました。見るとゴー
フが、左右に大きく蛇行し始めて、ドルフィン号もそれに
つられて揺れ出したのです。操舵室の三人は、体を支える
のに必死で、舳先のリアーニは、振り落とされないように
ロープにしがみついて身を守りました。
そうしてしばらくゴーフに振り回されていると、やがてロ
ープを巻いているウインチが耐えきれなくなって、みしみ
しと鈍い音を立て始めました。

「まずいぞ!ウインチが持っていかれる!」
リアーニは、慌ててウインチを抱え込んで支えようとしま
した。

「よせ、リアーニ!危ないから戻って来い!」
レクーが大声で叫びましたが、リアーニは戻ろうとせずに、
必死にウインチを抱え続けました。するとそのうちに、ウ
インチから煙が出始めました。

「リアーニ、そこから離れろ!ロープが焼き切れるぞ!」
ギャンゴーがそう叫んだのと同時に、ぱーんと甲高い破裂
音がして、ロープがウインチの根元から切れてしまいまし
た。

「わー!」
たまらずリアーニはのけぞると、そのまま後ろに尻餅をつ
いてしまいました。
ロープが切れて自由になったゴーフは、三本の銛を背中に
刺したまま、ドルフィン号を残して悠然と泳いで行きまし
たが、数百メートルほど先まで行くと、突然海の中に潜り
込んで、次に浮かび上がった時には踵を返して、ドルフィ
ン号の方へ向かってきました。

「くそっ、襲ってくる気だ!」
リアーニは、慌てて操舵室に向かって走り出しました。
ゴーフは、ぐねぐねと蛇のように縦に大きく波を描きなが
ら、猛然とこちらに突進してきます。

「やつめ、体当たりする気だ!」
レクーはそう叫ぶと、必死に舵を切って避けようとしまし
た。
そして、リアーニが操舵室に駆け込んだ瞬間、ゴーフは船
の側面に斜めから激突しました。

「うわー!」
船体が激しく揺れて、操舵室の中の四人は大きく弾き飛ば
されて床に転がりました。






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