(5)


翌日、パロッソは町の警察署へやって来ました。そして、
入口に立っている警察官にこう声をかけました。
「すみません。警察署長さんにお会いしたいのですが。私
はピカーブ・パロッソの居場所を知っています。」
警察官は驚いて、あたふたしながらパロッソを連れて署内
に入り、上司の警官に話しました。上司の警官もあたふた
して、パロッソを奥に連れていき、さらに偉い警官に話し
ました。するとその偉い警官は、どこかに電話をかけてか
らパロッソに、
「署長がお会いするそうです。一緒に来て下さい。」
と言って、二階にある署長室に案内しました。
部屋に入ると正面の奥に窓があって、その手前の机のとこ
ろに、ちょび髭を生やした背の低い小太り猫の警察署長が、
ひじ掛け椅子に座っていました。
「どうぞ、お掛けください。」
署長にそう言われて、パロッソは机の手前にある椅子に座
りました。署長はしばらくの間、手元の書類に目を通して
いましたが、それが済むと顔をあげて、パロッソに話しか
けました。
「ピカーブ・パロッソの居場所を知っているというのは本
当ですか?」
「はい。私がピカーブ・パロッソです。」
「なんだって!」
署長は驚いて、頭が天井にぶつかるんじゃないかと思うく
らい椅子から飛び上がりました。
「本当に君がパロッソなのか?」
「はい、本当です。私の家を捜索してみて下さい。今まで
に盗んだものがありますから。それが証拠です。」
署長は腕組みをして、うーんと唸りました。
「しかし‥‥どうして自首する気になったのかね?」
「じつはお願いがあるのです。私に懸かっている賞金を、
私に下さい。」
「なんだって!」
署長はまた驚いて、今度こそ頭が天井にぶつかるんじゃな
いかと思うくらい椅子から飛び上がりました。
「私は自首したのですから、言ってみりゃあ私が私を捕ま
えたようなものでしょう。」
「そんなめちゃくちゃな‥‥」
「そうしてそのお金を、ある少女に渡してもらいたいので
す。その少女は病気で、手術をしなければ治りません。そ
のためには、どうしてもそのお金が必要なのです。」
「しかし、どうしてまた‥‥君はその子を助けたいんだ?
捕まったらもう二度と出て来られないかもしれないのに。」
「私はその子のおかげで目が覚めたのです。その子のおか
げで、私は泥棒から足を洗う覚悟ができたのです。言って
みれば彼女は、私の命の恩人です。だから今度は、私が彼
女の命を救ってあげたいのです。それを私の最後の仕事に
したいのです。」
署長は身を前に乗り出して、パロッソの目を覗き込みまし
た。パロッソは目を反らすことなく真っ直ぐに、署長の目
を見返しています。
(わしも警察署長という仕事柄、人を見る目には自信があ
る。嘘をついているかどうか、目を見れば大体分かる。ど
うやらこの男は、嘘は言っていないようだが‥‥さて、ど
うしたものか‥‥)
署長は椅子にもたれかかり、もう一度腕組みをして考え込
みました。






前へ          戻る          次へ