(4)


レトロックとルアーノには、ふたり共通の好意を寄せる女
性猫がいました。研究所のすぐ近くに、昼休みや仕事帰り
によく利用する、行きつけの喫茶店があったのですが、そ
こに、うす紫色の美しい毛並みをした、エメラルド色の目
のウエイトレスがいました。ふたりはそのウエイトレスに
恋をしていたのです。
ふたりでコーヒーを飲みに行くと、奥手なレトロックは、
緊張して何もしゃべれなくなりましたが、陽気で社交的な
ルアーノは、
「おはよう。」とか、
「今日は天気がいいね。」などと、積極的に彼女に話しか
けました。すると彼女も、
「おはようございます。」とか、
「本当にいい天気ですね。」などと、優しい笑顔で返して
くれました。そんなルアーノのおかげで、彼女についてい
ろいろなことが分かりました。
名前はロマーリア、歳はレトロックとルアーノのふたつ下、
この近くにひとりで住んでいて、彼氏猫はいませんでした。
ある日、ルアーノはレトロックに言いました。
「僕は決めたよ。ロマーリアに交際を申し込む。」
「えっ、そ、そうか‥‥」
レトロックは少しうろたえましたが、平気なふりをしまし
た。
「君はいいのかい?僕が彼女と付き合っても、まだ友だち
でいてくれるかい?」
「当たり前じゃないか。」
「そうか、それを聞いて安心したよ。」
その日の仕事が終わって、レトロックは心臓をどきどきさ
せて、ひとり研究室の椅子に座っていました。
「今から彼女の所へ行ってくる。結果を知らせるから、こ
こで待っていてくれ。」
ルアーノがそう言って、ロマーリアに会いに行ったので、
そこで待っているのです。
一時間ぼど待っていると、ようやくルアーノが戻ってきま
した。
「どうだった?」
内心はらはらしながらレトロックがたずねると、ルアーノ
は、ひとつ大きなため息をつきました。
「君の勝ちだ。僕は負けたよ。彼女に交際を申し込んだら、
他に好きな男性がいるからって言って断られた。それは僕
の友だちかいってたずねたら、あわてて首を振ったけど、
僕はすぐにわかったよ。彼女は君が好きなんだ。」
なんて答えればいいかわからず、レトロックがおろおろし
ていると、ルアーノはその背中をどんと押しました。
「行ってこいよ。もう僕に気がねすることはない。」

こうしてレトロックとロマーリアは、交際を始めて、一年
後には結婚しました。
ルアーノはどうしたのかって?心配いりません。立ち直り
の早いルアーノは、すぐに別の恋人を見つけて、レトロッ
クたちの後を追いかけるように結婚したのです。






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