(6)
ある朝早く、レトロックは電話が鳴る音で目を覚ましまし
た。それは、科学研究所のルアーノからの電話でした。
「やあ、ルアーノか。久しぶりだな。」
ルアーノとはもう長い間会っていません。声を聞くのも何
年かぶりです。
「じつは君に、折り入って頼みたいことがあるんだが。」
ルアーノは、あいさつもそこそこに真剣な声で言いました。
「頼みたいこと?」
「電話では話せないことだ。研究所まで来てくれないか?
できるだけ早い方がいい。」
何か困った問題が起きたんだな、彼の声の調子から、レト
ロックはそう感じました。
「わかった。今からそっちへ行くよ。」
「すまないな。」
電話を切るとレトロックは、そそくさと着替えて朝ごはん
も食べずに、あわただしく家を出ました。
それから間もなくレトロックは、しばらくぶりに研究所に
やって来ました。どこもかしこも以前とまったく変わって
おらず、思わず懐かしさがこみ上げてきました。
無人の会議室に通されて、しばらく待っていると、ルアー
ノが入って来ました。レトロックはどきりとしました。ル
アーノの顔がこわばっていて、ただ事ではない雰囲気だっ
たのです。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
レトロックは、懐かしいのもそっちのけでたずねました。
「これを見てくれ。研究所の望遠鏡で撮影した写真だ。」
ルアーノは、一枚の写真をレトロックに差し出しました。
それは宇宙の写真でした。真っ暗な画面の中央に、ぽつん
と小さな白い光の点が写っています。
「これは?」
「一週間前に発見した小惑星だ。直径は十キロメートル近
くある。こっちに向かって近づいてきているんだ。このま
まいくと、あと二週間でネコオルランドの中心部を直撃す
る。」
「何だって!」
レトロックは驚いて、写真に顔を近づけて注意深く見つめ
ました。
「直径十キロの小惑星がぶつかったら、ひとたまりもない
な‥‥でも、そんなニュースは聞いてないぞ。」
「公表してないんだ。世間に知れたら、パニックになるか
らな。」
ルアーノは、深刻な顔をして言いました。
「君の知恵を貸してほしいんだ。もう一刻の猶予もない。
このままだとネコオルランドはおしまいだ。」
レトロックは、うーんと唸ったきり考え込んでしまいまし
た。
「爆薬で破壊することはできないのか?」
「うん、それも考えてみたんだが、これだけ巨大な物体を
爆破するには、大量の爆薬が必要だ。そんな大量の爆薬を
小惑星まで運ぶ方法がない。もし仮に爆破できたとしても、
おそらく爆発の衝撃波が地上を襲って壊滅状態になるだろ
う。小惑星が衝突するのと同じことだ。」
レトロックは、またうーんと唸って考え込みました。
「わかった、よく考えて見よう。小惑星に関するデータを
全部僕に預けてくれないか?」
「いいとも。よろしく頼む。」
小惑星のデータの束を受け取ると、レトロックは家に帰っ
ていきました。
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