(3)


ウォルホーはふたりのオス猫に言われるままに、ヨークハ
ームじゅうのお店に入っては売り物を持ち出して来る仕事
を続けました。
そのうちに入るお店も食料品屋さんだけでなく、服屋さん
や本屋さんや食器屋さんや金物屋さんなど、いろんなお店
に増えていきました。

「今日は思いきって、あの店にしよう。」
ある日、ふたりのオス猫は、ビルとビルのすき間から顔を
出して、遠くに見える宝石のお店を指さしながらウォルホ
ーにそう言いました。

「あそこは今までと違って、店員がとても用心深く目を光
らせているから、十分気をつけてやるんだぞ。」
「はい、分かりました。」

ウォルホーは、少し緊張しながら宝石のお店に入って行き
ました。
お店の中は静かでお客さんも少なくて、ふたりの言う通り、
店員さんに見つからないように宝石を持ち出すのはとても
難しそうでした。ウォルホーは、諦めて引き返そうかと思
いましたが、ふたりのお兄さんの喜ぶ顔を思い浮かべて、
もう少し頑張ってみようと自分に言い聞かせました。
すると一瞬、お客さんと店員さんが話をしている隙があっ
たので、今がチャンスだと思って、こっそりガラスのショ
ーケースを開けて宝石に手を伸ばしました。
その瞬間、突然大きな非常ベルの音が店じゅうに鳴り響い
て、その音はお店の外まで聞こえて来て、道を歩いている
猫たちは、みんな驚いて立ち止まって、一斉にそのお店の
方を見ました。

「まずいぞ、逃げろ!」
それを遠くから見ていたふたりの猫たちは、大慌てで逃げ
て行きました。

「おい君、何をしてるんだ!」
宝石を手に持ったまま呆然としているウォルホーに、店員
さんが素早く駆け寄りその手を捕まえて言いました。

「あの‥‥僕‥‥ゲームをしてるんです。」
「ゲームだって?宝石を盗むのがゲームなのか?ふざけた
ことを言うんじゃない!ただの泥棒じゃないか!」
「泥棒?」
ウォルホーは頭の中が真っ白になって、何も言い返せず口
をぱくぱくさせました。

「言い逃れは出来ないぞ。現行犯だからな。一緒に来なさ
い!」
店員さんはウォルホーの手を引いて、奥の部屋に連れて行
きました。

それからしばらくして、サイレンの音とともにパトカーが
やって来ました。ウォルホーはそのパトカーに乗せられて、
警察署へと連れて行かれてしまいました。






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