(4)


警察署に着くとウォルホーは、机ひとつと椅子ふたつが置
いてあるだけの小さな部屋で、警察官の取り調べを受けま
した。

「君の名前は?」
立派なひげを生やして、いかにも怖そうな顔をしたおじさ
んの警察官猫がウォルホーに訊ねました。

「分かりません。」
「分からない?どういうことだ?」
「僕‥‥自分の名前を忘れてしまったんです。」
ウォルホーは、そのひげ猫の目を見ることが出来ずに、下
を向いてもじもじしながら答えました。

「家はどこだい?」
「ありません。」
「お父さんとお母さんはいないの?」
「ふたりとも、僕が小さい時に死にました。」
「他に身寄りはないのかい?」
「はい、いません。」
ウォルホーは、親戚のおじさんとおばさんの所には戻りた
くなかったので、ふたりのことは黙っていました。ひげ猫
は、少し困った顔をしました。

「どうして宝石を盗もうとしたんだ?お金が欲しかったの
かい?」
「いえ、僕‥‥ヨークハームで知り合ったお兄さんたちに
言われてやったんです。そういうゲームだからって。」
「ゲーム?」
「はい。店員さんに見つからずに売り物を持って来れたら、
僕たちの勝ちだって言われて‥‥」
ウォルホーの話を聞いて、ひげ猫は呆れたように首を横に
振りました。

「それで、そのお兄さんたちっていうのはどこにいるんだ
い?」
「町外れの古い空き家にいると思います。」
ひげ猫は部屋のドアを少しだけ開けて、外にいる警官に地
図を持って来るように言いました。しばらくすると、ひげ
猫の部下らしき若い警官猫が、ヨークハームの地図を持っ
て来ました。

「その古い空き家はどこにあるんだ?」
ひげ猫は、机の上に地図を広げてウォルホーに訊ねました。

「この辺りだと思います。」
ウォルホーが地図の端っこの辺を指さすと、ひげ猫はそこ
にペンで印をつけて、部下猫に渡しました。部下猫はそれ
を持って部屋を出ていきました。

それからひげ猫は、ウォルホーにいろいろ質問をしました。
ウォルホーは、ふたりの若い猫と出会ってから今までにあ
ったことを、思い出せる限り正直に答えました。
一時間あまりが経った頃、部下猫が戻ってきて、ひげ猫に
何やら耳打ちしました。

「君が言ってた空き家はもぬけの殻だったそうだ。どうや
ら君が捕まったのに気づいて逃げたようだな。」
ひげ猫の言葉を聞いて、ウォルホーはようやくあのふたり
の若い猫に騙されていたことに気づいて、胸がひりひりと
締めつけられるように悲しくなりました。






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