(3)


「私、双子の姉がいるんだけど‥‥」
学校からの帰り、バス停でバスを待っている間、秀子が真
顔で正太に切り出した。
「子供の頃はすごく仲がよかったんだけど、最近、あまり
顔を合わせたくなくなってしまって‥‥」
秀子は言葉を切って、隣の正太の様子を窺った。正太は真
面目な顔をして、黙って聞いていた。
「姉と私は性格も考え方も全然違ってて、一緒にいると何
だか気詰まりというか、変に気を使ってしまって、打ち解
けて話せないの。心を見透かされているような、上から見
下ろされてるような、そんな気がして‥‥嶋くんは兄弟い
るの?」
「ああ、三つ上の兄貴がいるよ。」
「仲はいい?」
「うーん‥‥ほとんど話もしないし、顔も合わさないよ。
仲悪い訳じゃないけど。兄弟なんて大体みんなそんなもん
じゃないか?男と女は違うのかもしれないけど‥‥」
ほんの少しの沈黙の後、秀子が再び口を開いた。
「姉はね、全然欲がなくて、誰にでも優しいの。優し過ぎ
るぐらい。私と大違いだわ。私‥‥姉が羨ましいのかもし
れない。私、性格悪いから。」
「そんなことないよ。お前、結構性格いいと思うよ。」
「そう?」
「双子だって、それぞれ違う人間なんだから、性格も違っ
てていいんじゃないか?あんまり気にするなよ。そのうち
また仲良くなれるさ。」
正太は少し笑いながら、秀子を励ますように言った。
「うん、ありがとう。」
秀子もようやく口元をほころばせた。正太に話したことで、
少し気持ちが楽になった気がした。

秀子は正太に友情を感じていた。それは、中学の時に抱い
た山岡誠への憧れとは少し違っていた。
正太は男だからとか、女だからとかいう先入観を持たず、
誰のことも男女の分け隔てなく見ている節があった。秀子
のことも異性としてではなく、一人の人間として接してく
れた。それが秀子には嬉しかった。

「秀ちゃん最近帰りが遅いね。何かあったの?」
夜、部屋のカーテン越しに優子の声がした。
「秘密。」
秀子はそう言って笑った。






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