第二章 教会派と寺院派
(1)
ハヤトとエイゴは幹線道路に沿って、町から町へと渡り歩
いたが、どの町も荒廃して、人の住まないゴーストタウン
になっていた。
幾つかの無人の町を通り過ぎた後、二人は一際大きな町に
辿り着いた。そこはかつて大都市だった面影を残してはい
たものの、建物の半分は倒壊し、残りの建物も傷痕だらけ
の無惨な姿を晒していた。それはかつてこの場所で、激し
い暴力が繰り広げられていたことを物語っていた。
暴力の痕跡‥‥それはハヤトに、孤児院で受けていた暴力
を思い起こさせ、深い悲しみと恐ろしさで心が一杯になっ
た。
二人は、町の中心部を東西に突き抜ける大きな通りを歩い
ていったが、人影は見当たらなかった。しばらく歩くと、
通り沿いに一軒の小さな商店を見つけたので、中へ入って
みた。
そこは雑貨店のようだった。狭くて薄暗い店内に客はおら
ず、奥のカウンターに店主らしき人相の悪い中年男が立っ
ていた。
「見慣れない顔だな。何処から来た?」
店主は二人をいぶかしげな目でじろじろ見ながら言った。
「東から来た。西へ向かってる。この町に今夜一晩泊まり
たいんだが。」
エイゴが少しも動じずに尋ねた。
「宿屋はないが、空き家ならいくらでもあるから、勝手に
入って寝ればいい。」
「この町には住人はいるのか?」
「ああ。」
店主は面倒くさそうに答えた。
「食べ物は売ってるか?」
「ああ、あるよ。空き家で寝るなら、この通り沿いを探す
んだな。忠告しておくが、他の道には行かないことだ。」
「どうして?」
「この町の人間は、通りを境にして南北に分かれて住んで
いる。北には教会派が、南には寺院派が住んでるんだ。」
「教会?クリスチャンがいるんですか?」
ハヤトが興味深そうに口を開いた。
「そうじゃない。北には古い大きな教会が、南には寺院が
あって、まあ今じゃどっちの信者もいないんだが‥‥北の
奴らにとっては教会が、南の奴らにとっては寺院が、いわ
ばシンボルみたいなもんなのさ。
北の奴らと南の奴らは仲が悪くてね。年中衝突しては騒ぎ
を起こしてばかりいる。お陰でこの町はこんな有り様にな
っちまった。それで俺たちは連中のことを、皮肉を込めて
教会派、寺院派って呼んでるんだ。俺みたいなどちらにも
属さない人間はごく僅かで、この通り沿いにだけ住んでる
って訳さ。昼間は連中の揉め事が怖くて、ほとんど表を出
歩かず家の中にいるんだ。」
一人で暇をもて余していたらしく、店主は急に饒舌になり
出した。
「悪いことは言わない、あんたらも連中には関わらないこ
とだ。揉め事に巻き込まれたくなければな。」
前へ 戻る 次へ
|