(2)


広場を後にしたハヤトとエイゴは、引き続き泊めてくれる
家を探し歩いたが、一向に見つからず、とうとう町外れま
で来てしまった。日が暮れ辺りは薄暗くなって、空気が冷
たくなって来た。
二人が諦めかけていると、何もない枯野の中に、ぽつんと
一軒だけ家が現れた。
「ここが駄目なら今夜は野宿だ。」
その家に向かいながら、エイゴが呟いた。

家のドアを叩くと、中から頭の禿げた小太りの男が出て来
た。
「一晩泊めてくれないか?金なら持ってる。」
男はしばし、探るような険しい目で二人を見ていた。
「本当か?証拠を見せろ。」
そう言われるとエイゴは、懐から金を一掴み取り出して、
男の目の前でその手を開いてみせた。すると男の顔に一瞬、
不純な笑みが浮かんだように見えた。
「変な気を起こすなよ。こんなものもあるんだ。」
エイゴはもう片方の手でポケットから拳銃を出して見せた。
男は疑わしそうな顔でそれを一瞥した。
「本物か?」
「試してみるかい?」
エイゴが引き金に指を掛けると、男は慌てて両手を小さく
上げた。
「わかったわかった。裏の物置小屋なら使ってもいい。た
だし一晩だけだ。金を先に払ってもらうぞ。」
「半分だ。残り半分は後で払う。」
「ちっ、しっかりしてやがる。」

エイゴから金を受け取ると、男は家の裏の物置小屋に二人
を連れて行った。薄汚い小屋の中は狭く、埃を被った荷物
が雑然と積まれていた。
「明日の朝には出て行ってもらうぞ。」
そう言って男は戻って行った。
「やれやれ、これで一安心だ。」
エイゴは近くにあった木箱の埃を払って、その上に腰掛け
て一息ついた。
「どうした?浮かない顔だな。」
ハヤトが立ったまま、何か考え事をしている様子なのに気
づいて、エイゴが問いかけた。
「うん、さっきの人のことが気になってね。ほら、皇帝っ
て呼ばれてた人だよ。」

ハヤトはあの浮浪者の虚ろな目の中に、深い悲しみの色を
見て取っていた。怒りの感情を持たない彼は、その分悲し
みの感覚が人一倍強かった。そのため彼は、人の悲しみに
も敏感だった。人の悲しみを、まるで自分のことのように
感じてしまうのだった。
それにもう一つ、酔っ払いの男の言葉も胸に引っ掛かって
いた。あの浮浪者は今までに何をして来たのか?それがあ
の目の中の悲しみの原因なのだろうか?

「お前はすぐに人のことを気にかけるからな。まあそれが
お前のいいところなんだけど‥‥あまり深く考えるなよ。」
エイゴになだめられて、ハヤトは小さく頷いた。






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