第九章 森
(1)
村を発った三人は、岩だらけの山道を丸三日歩き続けた。
すると四日目に、山道の先に大きな森が現れた。三人はそ
の森の中へと足を踏み入れていった。
森の木はひとつ残らず枯れていたが、それでも中まで陽が
届かず暗かった。北風が枯れ木の枝の間から吹き込ん来て、
不気味な音を響かせていた。かじかむ手に白い息を吹きか
けながら、三人は黙々と森の中を進んだ。
「大丈夫かい?」
「ええ‥‥」
疲れた様子でだんだん歩調が鈍ってきたサツキを気遣って、
ハヤトが横に付き添って声を掛けた。
「少し休もう。」
二人の少し先を歩いていたエイゴが振り返って言った。
「大丈夫です。私、まだ歩けます。」
「そう無理するな。まだ先は長いんだ。」
エイゴは大きな木の根元に腰を降ろした。ハヤトとサツキ
も追いついてその横に座ると、水筒の水を一口ずつ飲み、
ポケットから取り出した干し芋のかけらを分けあって口に
入れた。それが最後の食べ物だった。
「水だけじゃあ、そう長くは持たないな。早いとこ集落を
見つけなきゃ。」
木々の間から見える空が、徐々に薄暗くなって来ていた。
「僕たち、これからどうなるのかなあ‥‥」
ハヤトが独り言のようにぽつりと呟いた。
「そう悲観するなよ。何とかなるさ。」
「うん‥‥でももし、この先もまだまだ森が続いていたら
‥‥」
「しっ!」
突然、エイゴがハヤトの言葉を遮って立ち上がった。何か
の気配を感じたようだった。
三人が黙って耳を澄ますと、遠くの方から微かな物音が聞
こえた。だんだんそれが近づいて来て、すぐ目の前の木の
間から、いくつもの影が姿を現した。
それは十数匹もの野犬の群れだった。犬は三人を見つける
と、飢えた様子で低い唸り声を上げながら、うろうろと周
りを歩き回って、飛びかかる機会をうかがっているように
見えた。
「こいつはやばいことになったぞ。」
エイゴはハヤトとサツキの前に立って、強ばった表情で野
犬の群れを睨みつけた。
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