(2)
「二人とも、木の上に登れ!」
エイゴはそう言うと、ハヤトと一緒にサツキを近くの木に
持ち上げて登らせ、続いてハヤトを持ち上げた。その時、
一匹の野犬がエイゴに飛びついて足に噛みついた。
「うっ!」
エイゴは低い唸り声を上げて振り向き、足から犬を引き離
そうとしたが、犬は噛みついたまま離そうとしなかった。
エイゴは懐からナイフを出して、犬の喉元に突き刺した。
犬はかん高い悲鳴を上げて倒れ、のたうち回って、やがて
動かなくなった。
それを見るや否や、他の犬たちが一斉にエイゴに飛びかか
って来た。エイゴは逃げる間もなく仰向けに倒れて、その
上に犬たちが群がった。
「エイゴ!」
木の上からハヤトが叫んだ。
「来るな!そこにいろ!」
犬の下からエイゴの声がした。
犬たちは荒々しい唸り声を上げて、エイゴの上にのしかか
ってうごめいていたが、突然その下から銃声がして、一匹
の犬が悲鳴を上げて飛び上がり、その場に倒れた。犬たち
が驚いて離れると、エイゴは銃を構えながら起き上がった。
更にエイゴが数発撃つと、何匹かの犬が悲鳴を上げて倒れ
た。それを見て犬たちは、じりじりと用心深く後退りして、
しばらくエイゴを睨んでいたが、やがてすごすごと引きあ
げて行った。
「エイゴ!」
ハヤトとサツキが木の上から降りて駆け寄ると、エイゴは
力尽きて崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。全身血だ
らけで、服はずたずたに引き裂かれていた。
「大丈夫かい?」
二人はエイゴを両脇から支えながら心配そうに様子をうか
がった。
「ああ、まだ生きてるよ。」
エイゴは精一杯の笑みを浮かべると、弱々しい声でそう答
えた。
「傷の手当てをしなきゃ。」
「いや、そんな暇はない。奴らはまた戻って来るかもしれ
ない。早くここを離れないと。」
「でも‥‥歩けるかい?」
「大丈夫だ。」
二人に両脇を抱きかかえられて、エイゴはよろよろと立ち
上がり、そのまま三人はゆっくりと歩き出した。
前へ 戻る 次へ
|